初めて評価者になったとき、期初に取り組む3つのTIPS

評価者ティップス1

この記事は、月間人事マネジメントで掲載された連載「評価者1年目のTIPS」を再掲さいした記事です。

出典:月間人事マネジメント

「新任の評価者は何をしていいのか分からない」

1999年の秋、上場企業の小売業で店長をしていた私は、初めて「人を評価する」ということに震えていました。会社から評価のやり方などは特に教えてもらわず、人事から届いた、「部下に自己評価をさせたうえで,一次評価を実施し、 2 週間以内に二次評価者まで提出すること」という指示書を前にして何をするべきか全く分からず、茫然としていたのが今でも思い出されます。

皆さまの会社では、初めて評価者になった社員に対してどのようなご支援をされているでしょうか。もちろん評価者研修などを実施し、評価者として被評価者に対する面談のスタンスや目標設定などの支援をされているかと思います。ただ、そんな中でもいざ評価の場面になると、何をしてよいか分からず、不安に駆られる評価者を人事としてもコンサルタントとしても数多く見てきました。そのような方々に向けて今回「評価者1 年目のTIPS」として「あり方」ではなく「やり方」を明示し、少しでも評価者の不安を解消したうえで,人事の皆さまにお役に立てる連載にしたいと思っております。

【TIPS①】評価制度を部下と上司が一緒に理解する

私が企業で人事責任者として評価制度を運用していた際には、「評価制度は社員の人生を左右する」という気持ちで取り組んでいました。評価の良し悪しで給与が決まるのはもちろん、評価結果によっては、昇格昇進につながり、人事異動にも影響することは、これまでの経験から評価者の皆さんはよくお分かりです。ただし、被評価者である部下の方々はまだまだ評制度の詳細を理解していないケースが見受けられます。

そこでまず、上司と部下の期初面談の際に、部下の視点から評制度を一緒に確認することをお勧
めします。確認ポイントは以下の3 点です。

  1. 評価制度の全体像と部下の位置づけを確認
  2. 部下の次のステップは何か
  3. 次のステップに行くための必要な評価または点数

基本的ですが、部下としては評価制度の理解を通じて目線が上がり、次のキャリアを見据えるこ
とができます。上司としては部下の現在地を理解し、育成の方向性を考えるきっかけになります。

反対に、期初に上司部下ともに評価制度を理解していない場合は、期末になってようやく部下の位置づけを理解するものの、期末では育成にもつながりません。また最悪の場合は、部下の同期が次々と昇格・昇進していくなか、評価制度の仕組みを知らないばかりに自分の部下だけが取り残される、という悲劇も起こりえます。

ぜひ期初には上司部下で評価制度を理解し、位置づけを確認する場を設けることをお勧めします。

【TIPS②】評価項目を読み替える

この「評価項目を読み替える」は評価者にとって一番手間がかかり大変な内容かもしれません。評価項目を読み替えるとは、既定の評価項目をそれぞれの部下向けにアレンジするということで
す。もう少し丁寧にご説明すると、能力評価や行動評価は部下1 人ひとりに個別の評価項目が設定されるわけではなく、属している等級や役割に応じて抽象的に記載されています。もちろん、多くの社員が対象になるために比較的汎用的な表現で評価項目が記載されているのは当然です。

その際、「積極的な行動ができている」という評価項目があった場合に、上司と部下の間でお互いがその汎用的な評価項目を個人の解釈や目線により自己評価や一次評価をしてしまうことがあります。

例えば、上司は「積極的な行動ができている」という評価項目の“積極的な行動”の中身を「新し
い取り組みや提案」と認識し、部下は「迅速な取り組み」と理解していたという事例が発生します。その場合には当然、評価する内容がそれぞれ異なり、評価点数(もしくは評語)にも齟齬が発生します。そして、その後のフィードバック面談では評価者と被評価者の間においては、認識のズレを相手の責任として押し付け、信頼関係が削られてしまうこともあります。

そこで「評価項目を読み替える」という取り組みが有効になります。

前述した、「積極的な行動ができている」であれば、期初面談にて上司から部下に対して、「あなたには○○のような新しい取り組みをしていただくことが、この“積極的な行動”の項目では標準の評価となります」と伝えます。それが「評価項目の読み替え」です。

これを伝えることで、上司と部下における評価項目の内容認識のズレはなくなり、期末の評価時にはスムーズに評価を実施できます。

評価項目を読み替える際に重要なのは、「〇〇ができたら標準評価です」と伝えることです。企業によっては、標準評価は「3 」であったり、「B」であったりしますが、まずは標準評価として求めるレベルの認識を合わせることが大切です。

評価項目を読み替える目的は、期末の評価時にスムーズな評価やすり合わせができることだけではありません。期初面談にて上司から部下に評価項目を通じて、期待する行動を伝え、それが部下の成長につながることが最大の目的になります。

 すべての評価項目を読み替える作業は大変ですから、特に課題と思われる項目や成長を期待する項目に集中してもかまいません。丁寧な評価項目の読み替えができれば、部下にとって成長の大きなきっかけになります。

【TIPS③】まず評価してみる

期初面談にてTIPS①「評価制度を部下と上司が一緒に理解する」、TIPS②「評価項目を読み替
える」と実施した後には、その場で対象の人事考課表をプレ実施いただくことをお勧めします。

 人事考課には、評価により給与を決定すること以上に、人材育成の機能があります。ただ、残念ながら多くの組織では、期初に人事考課の理解を深めることなく、期末に人事からの実施連絡により、ようやく評価者も被評価者も人事考課表をバタバタと確認し、なんとか評価する様子が散見されます。そのような取り組みではあくまでも「できた」「できていなかった」の結果論に過ぎず、人材育成にはつながりづらい状態です。

そこで期初面談時にまず部下に自己評価をしていただきます。その場で部下の業務レベルを理解
し、上司・部下の双方が,得意領域や課題を認識する場とするのです。そこで得た共通認識は、期中の業務における期待する役割への依頼や課題克服の支援につながります。つまり、上司は部下に対しての育成ができているということになります。

育成ではまず部下の現状レベルの認識が基本です。期初面談にて人事考課のプレ実施を活用いただく仕組みは、非常に有効な人材育成となります。

初心者でも安心して評価ができる環境整備を

初めて評価者になった社員は、期初に評価者として必要な行動などなかなかできません。ぜひ人事や評価事務局の皆さまが、必要な取り組みを伝える機会を設け、評価者が安心して業務に臨める環境を整えましょう。それが評価者育成の第一歩と考えられます。

この記事を書いた人

野嵜 晃弘

大学卒業後、入社した小売業で店長など現場の経験を積み、総務部へ異動後は、評価制度のみならず労務制度、育成制度、福利厚生など人事制度全般を大幅に見直し、社員の定着率向上を実現した。独立後は人事制度コンサルタントとして、制度構築から評価者研修、運用定着まで一気通貫をモットーに4年間で30社以上の評価制度に携わる。運用まで辿り着かず途中で頓挫することがある評価制度において、制度構築および運用100%を実現。またキャリアコンサルタント資格を活かしたフィードバック面談支援や制度運用を通じて人事社員の育成を得意領域としている。

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