評価期間中に上司が進める「ネタ集め」3つのTIPS

評価期間中に上司が進める「ネタ集め」3つのTIPS

この記事は、月間人事マネジメントで掲載された連載「評価者1年目のTIPS」を再掲さいした記事です。

出典:月間人事マネジメント

評価で最も大切なのは「期末」ではなく「期中」

「『判断力』の項目かぁ。部下が何か判断したことあったかな?特に印象に残ることはないからB評価にしておくか」……期末の評価の際に、人事考課表の評価項目を前にして、部下の行動を何となく思い出しながら評価をつけている評価者がいることは人事の皆さまもご認識されているかと思います。しかし、当然ながら、評価項目への反映は期中の「印象」からではなく、明確な「行動記録」から根拠をもって導き出す必要があります(図表 1 )。

評価は「印象」ではなく「行動記録」から
図表1:評価は「印象」ではなく「行動記録から」

「印象」による評価反映には 2つの問題があります。まず 1 つ目は「評価が偏ること」です。印象
に頼った評価を実施すると評価者の興味対象の高い部下行動しか反映されません。ですから評価者の興味から外れた部下の努力・行動は反映されず偏った評価につながります。

 問題の 2 つ目は「フィードバック面談で説明できないこと」です。評価の最後にフィードバック面談をする際、A評価やB評価の理由を説明します。その際、印象で評価をしてしまうと、部下から「どうして私の『判断力』の項目はB評価なのでしょうか」と問われた際に「何となく」と答える羽目になってしまいます。もちろんこれでは部下の納得は得られず、フィードバック面談で上司・部下の信頼関係は崩れてしまいます。

いずれにしても「印象」による評価反映は問題が多いため、やはり部下の「行動記録」という「ネタ」をいかに集めておくかが、部下の納得度の高い適正な評価につながります。

人事評価において評価者が力を掛ける時期は、期末の評価時期や期初の面談時期と思われます。も
ちろんそれらの時期も「評価制度の仕組み」としては大切ですが、本当に重要なのは期中です。いかに上司が部下の行動を認識し、評価者としての活動をするか、そして人事はいかに期中に上司に対して評価者としての活動をさせるかが「評価制度の運用」として最重要ポイントになります。

 そこで連載第 3 回目は、評価期間中にどのように評価者が部下の行動を記録するかというTIPSを⑦~⑨としてご紹介いたします(①~③は第 1 回、④~⑥は第 2回にてご紹介済)。

【TIPS⑦】毎月人事考課を実施する

部下の行動を記録しようと思っても意識を高めるだけではなかなか記録を取ることはできません。そのためやはり「仕組み化」して記録を取らざるをえない環境を作ることが必要です。

連 載 第 1 回 目 のTIPS③ に て「人事考課表をプレ評価しよう」とお話しました。それをさらに前に進め、毎月人事考課表を利用し、自己評価を部下に実施させることが効果的です。当然、自己評価に対して上司がアドバイスや成長に対して承認等を行い、さらに期末評価へ反映する材料は集まりやすくなり、部下の納得度の高い評価になります。

もちろん評価の納得度のみならず、毎月、人材育成を定期的に開催することにつながり、部下からの上司や会社に対する満足度も高まります。特に今の若い社員はいかに自分に対して興味関心を持ってもらえるかが、仕事に対しての意欲や会社への定着につながります。そのような視点からも毎月の人事考課の実施により、部下の行動記録を集めることをお勧めします。

すべての人事考課項目を実施する手間を掛けられない、時間がない、ということであれば、期初に設定した「今期の課題項目」や「期待する項目」だけに絞って定期評価をするだけでも、部下行動の記録を取ることはできます。

【TIPS⑧】部下への承認・指導をメモに取る

評価期間中に部下に対して、「今回のクレーム時の判断は良かったよ」「顧客対応のスケジュール調整にミスが多かったよね」など褒めたり、指導したりする機会も多いと思いますが、その際にはぜひ、その内容をメモとして残しておくことをお勧めします。印象での評価とは異なり、メモは根拠ある評価につながります。メモの書式は特に問いませんが、私がお勧めしているのは、図表 2 のようなシンプルな書式です。

これであれば、日付と承認指導内容を記載するだけですから、評価者側にそれほど負担もありません。また部下名を一覧にすることで、コミュニケーション量の多い部下と少ない部下が一目瞭然となり、コミュニケーション量の少ない部下への関与を高めるきっかけにもなります。

 メモは手書きでもデジタル上でも結構です。人事の取り組みとしては、評価者が部下行動をメモとして残す仕組みや意識向上の推進が必要です。

部下名承認(GOOD)指導(BAD)
成田4/22 先回りした顧客提案ができた
7/29 想定外の計画が立てられた
5/29 確認の電話を入れずにクレーム
6/8 勝手な判断で損失
8/25 集合時間に遅刻
後藤4/14 顧客からのお褒めの言葉
西原5/23 丁寧な進捗報告で不備防止
6/11 部署外への働きかけが効果的
7/25 自己啓発の勉強会開催
7/23 同僚に対するパワハラコメント
9/15 提出物の期限切れ
図表2:承認・指導の記録メモ例

【TIPS⑨】「報連相」より「雑相」が有効

 部下の情報を収集するにあたり、有効な手段は部下からの報連相です。ただし報連相は、比較的部下の都合の良い情報が上がりやすく、上司として本当に必要な情報が入りづらいことがデメリットになります。また報連相は原則として部下主導の行為のため全く情報が入らない可能性もあり、情報収集の問題になります。

そこで、今、取り入れたいコミュニケーションは「雑相」です。「雑」は雑談、「相」は相談の意味になります。これを上司から部下に対して問いかけるのです。特に雑談はリモート下において、必要性が再認識されてきました。ぜひ1 日に 1 回でも雑談での声掛けをお勧めします。ただ、雑談が苦手という上司もいらっしゃるかと思いますので、その場合は、相談を部下に持ち掛けましょう。ご自身が困ったことを自分の上司に聞いたりネットで検索したりするのではなく、部下に「分からないので、教えてもらえるかな」とご相談するのです。その時点から部下は「上司に信頼されている」という気持ちになり、部下からも安心して上司に対して相談が増えることは想像に難くありません。

部下の行動情報を集めるために評価者である上司からアプローチを掛けていただくことが、取り組みの第一歩になります。

期中の評価が高まる仕掛け・制度が有効

「評価制度は運用が大変」とはよく聞くフレーズです。もちろん期初と期末に丁寧な面談や評価をすることは大切ですが、肝心な評価期間中に評価制度の意識が低くなることは運用としては問題です。ぜひ、人事の皆さまにおかれましては、期中の評価者の意識が高まる取り組みをお願いしたいと存じます。

この記事を書いた人

野嵜 晃弘

大学卒業後、入社した小売業で店長など現場の経験を積み、総務部へ異動後は、評価制度のみならず労務制度、育成制度、福利厚生など人事制度全般を大幅に見直し、社員の定着率向上を実現した。独立後は人事制度コンサルタントとして、制度構築から評価者研修、運用定着まで一気通貫をモットーに4年間で30社以上の評価制度に携わる。運用まで辿り着かず途中で頓挫することがある評価制度において、制度構築および運用100%を実現。またキャリアコンサルタント資格を活かしたフィードバック面談支援や制度運用を通じて人事社員の育成を得意領域としている。

セミナー動画

はじめての「人事評価制度の作り方」

「人事評価制度って必要なの?」「そろそろ評価制度導入しなきゃ・・・」とお考えの中小零細企業の社長様、人事ご担当者様にぴったりの情報、失敗しない人事評価制度作りの秘訣をお伝えしています。