目標管理の進捗確認に必要な3つのTIPS

目標管理の進捗確認に必要な3つのTIPS

この記事は、月間人事マネジメントで掲載された連載「評価者1年目のTIPS」を再掲載した記事です。

出典:月間人事マネジメント

目標管理の評価は期中・プロセスの支援が重要

「行動評価に比べると目標管理の評価はラクだよなぁ。目標に対して達成したか達成していないかを評価するだけだし」

以前の職場で管理職が口にしたこのセリフを目標管理に携わるたびに思い出します。確かに行動評価は日々の部下の業務行動を観察しそれを根拠として評価しなければならないため期中の上司・部下のコミュニケーションが重要になり手間がかかります。それに対して、目標管理は期初に設定した目標が達成したか達成していないかを見れば、評価ができてしまいますので目標設定さえしっかりとできていれば、評価そのものは簡単かもしれません。

しかし、上司の役割は目標を達成したかどうかの評価だけではありません。部下の目標達成を通して組織の目標を達成することが必要になります。そのため、部下が目標を達成するための支援が重要になり、それを指導、促進するのが人事の役割になります。

改めて今回は目標管理支援に重要な上司による進捗確認3つのTIPS(⑩~⑫)をご紹介します。(①~③は第1回、④~⑥は第2回、⑦~⑨は第3回にて紹介済)

【TIPS⑩】進捗支援はスタートを見届けることから始まる

一般的に目標管理は、半年から1 年間かけて取り組むことが多いため、時間と手間がかかる目標が多いのが特徴です。そのため、目標が大き過ぎて、何から手を付けてよいか分からず、なかなか目標に向かって行動をスタートできないという部下が見受けられます。それに対して上司は見ているだけでは目標達成のための時間が過ぎていくだけです。

従って、上司として部下の目標管理の支援は「目標に向かって一緒にスタートを切ること」が最初に実施することになります。ただし、「一緒にスタートをする」とはいっても部下のレベルやキャリアによって対応は変わります。

  • 目標設定すれば問題ない部下
  • 目標へのステップを詳細に示す必要がある部下
  • しっかりと関与し、共に行動する必要がある部下

など、それぞれのスキルや目標のレベルによりスタートの仕方は変わります。いずれにしても部下
の背中を少し押して、目標管理のスタートを見届けることを上司の役割として取り組んでいただければ、目標達成に近づくことができます。

【TIPS⑪】進捗チェックは10%と80%がキモになる

もちろん、スタートの後押しだではなく、進捗確認をスケジュールに組み込み、目標達成のため
に定期的に進捗状況を確認する必要があります。では進捗確認はどのようなルールに基づき実施するのがよいのでしょうか。進捗確認には2種類の確認方法があります。「時間」と「質」です。

時間での進捗確認とは、毎週金曜日だったり毎日終業前だったり、時間に基づきチェックするこ
とです。対して質による進捗確認とは、100%に対して50%の時点で確認するといった達成度合いによるチェックです。どちらのチェックが良いとか悪いとかはありませんが、若手の部下や初めての目標に対しては時間による進捗確認が比較的向いているといわれています。反対に質による進捗確認はある程度キャリアのある部下や取り組みイメージが湧きやすい目標に向いています。

では、質の進捗確認はどの時点でチェックをする必要があるでしょうか。押さえるべき進捗ポイントは10%と80%です。目標や業務進捗は時間と質に対して正比例で直線的に進むことはなく、正のS字曲線といわれる実線を描くことが多くみられます(図表1 )。

図表 1 支援のタイミングは「10%」と「80%」
図表1:支援のタイミングは「10%」と「80%」

その際のポイントはまず10%の地点です。進捗10%では取り組む方向性や方法に間違いがないか
をチェックし修正支援をしつつ、その後の取り組みを促進する機能があります。次に進捗80%に注目します。ここまで来ると目標である100%のゴールは見えてきています。しかしこの残りの20%は非常に手間がかかり細部の詰めに時間がかかる部分です。達成するために部下 1 人では辿り着くのが難しい80%から100%については下記のような積極的な支援が上司に求められます。

  • 上司としての経験をアドバイス
  • 自部署・他部署へ協力を依頼する
  • 顧客への声を収集し参考にする

これらは部下本人では実施しづらく、上司として必要な役割であり、部下の目標達成ひいては組織の目標達成のために重要な取り組みになります。ぜひ進捗のポイント毎に、目標に対する必要な支援をお願いします。

【TIPS⑫】進捗支援は減点法ではなく加点法で評価する

時間での進捗確認、質における進捗確認、いずれも、目標管理の途中経過では100%の目標に対し
て「できていない内容」ばかりを指摘するのではなく、0 %から70%まで積み上げた「できた内容」を特に評価してください(図表2 )。

図表 2 進捗管理は「承認」と「支援」で
図表2:進捗管理は「承認」と「支援」で

70%の進捗に留まっていると、ついついできていない30%に目が行きがちです。しかしまず実施するべきは 0 %から70%まで積み上げた成果の確認です。そして、70%の成果までのプロセスをじっくりとヒアリングし、承認します。それにより部下は積み上げたプロセスが問題ないことを理解し、自信を持ち、その業務に対する再現性を身につけます。そのうえで、残り30%の不足をどうするのか一緒に検討するアプローチが必要です。これを検討する際には次のようなコツがあります。

  • 上司が安易に答えを提示しない
  • 肯定的に部下の意見を聴く
  • 拡大と限定の質問を混ぜて訊く

これらを押さえて面談いただければ良い進捗確認ができます。

上司の計画的進捗管理を人事の立場から支援する

以上が目標管理の進捗支援TIPSになります。上司による部下への進捗確認というマネジメン
トは、人事の立場から働きかけるのが難しい領域です。しかし目標管理にとって大切な期中に何もせず上司任せにすることは、部下の目標達成に不確定要素が出るだけでなく、組織目標の達成にも支障を来します。人事としては上司に対する計画的な進捗確認を支援し、評価者のレベルおよび被評価者の納得度の向上にご尽力いただければと思います。

この記事を書いた人

野嵜 晃弘

大学卒業後、入社した小売業で店長など現場の経験を積み、総務部へ異動後は、評価制度のみならず労務制度、育成制度、福利厚生など人事制度全般を大幅に見直し、社員の定着率向上を実現した。独立後は人事制度コンサルタントとして、制度構築から評価者研修、運用定着まで一気通貫をモットーに4年間で30社以上の評価制度に携わる。運用まで辿り着かず途中で頓挫することがある評価制度において、制度構築および運用100%を実現。またキャリアコンサルタント資格を活かしたフィードバック面談支援や制度運用を通じて人事社員の育成を得意領域としている。

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