インタビューで行動評価の納得度を高める3つのTIPS

インタビュー

この記事は、月間人事マネジメントで掲載された連載「評価者1年目のTIPS」を再掲載した記事です。

出典:月間人事マネジメント

いよいよ今回は、「期末にどのような評価をするべきか」をお伝えします。

『完璧な評価よりも、納得度のある評価を目指しましょう』

これは、評価者研修の際に最初にお伝えする内容です。特にイマドキの部下は上司や会社のミスや不備に厳しいため、それに応えようとして評価者はヌケモレのない完璧な評価をしなければと思いがちです。ただ、それは難しいと理解することが上司としても人事としても大前提となります。完璧な評価を目指すよりも、部下が上司の評価に納得する取り組みが重要であり、それは部下の意欲向上やレベルアップにもつながります。

では部下の納得度が高まる評価はどのように実現できるのでしょうか。これまでの連載でお伝えしてきた通り、次のようなTIPSを丁寧に評価者として実施いただければ、十分納得度は高くなります。

『期初』においては、

  1. 評価項目を部下の業務内容に読み替える
  2. まず評価を実施し現状を理解する

『期中』においては、

  1. 承認・指導内容をメモに記録する
  2. 雑談・相談にて部下の行動情報を集める

 そして『期末』においては、今回お伝えする 3 つのTIPSに取り組んでいただくことで、納得度がさらに高まります。期末の評価時に実施する 3 つのTIPS(⑬~⑮)は「インタビュー」がキーワードです(①~③は第 1 回、④~⑥は第 2 回、⑦~⑨は第 3 回、⑩~⑫は第 4 回にて紹介済)。

【TIPS⑬】部下へのインタビューの実施

一般的に評価は、「自己評価」⇒「一次評価」⇒「二次評価」と進みます。その際に評価者として気を付けるべきは、一次評価実施後そのまま二次評価者に送付して終了ではなく、自身の一次評価に疑問を持つことです。その際に必要になるのが、部下インタビューになります。

それでは部下に対するインタビューはどのような場面で実施するのかをご紹介します。部下からの自己評価を踏まえて、評価者として一次評価を実施すると、評価項目によっては、自己評価との間に差異が発生します。その場合、そのまま二次評価者に提出するのではなく、部下がなぜそのような自己評価を実施したのかインタビューを通じて確認します。

例えば、「判断力」という評価項目に対して自己評価が「 5 」、一次評価が「 3 」だった場合に、なぜ「 5 」という自己評価にしたのか、その理由を質問します。その際、部下のコメントを否定するのではなく、部下の意見を前向きに聴き、評価の参考にする姿勢が必要です。部下の意見を聴いてみると上司として認識していなかった部下の行動や偏った一次評価が見えることもあります。ぜひ、評価の質を高めるためにも部下へのインタビューを実施してください。インタビューは評価内容を良くするだけではなく、部下の視点からも「上司は自分の意見を取り入れて評価してくれた」という気持ちになり、評価に対する納得度が高まります。

また、このようなインタビューは、特に面談の場をわざわざ設ける必要はありません。どちらかのデスクや職場の片隅などでの立ち話レベルでかまわないので、こまめに確認するとよいでしょう。

【TIPS⑭】他者へのインタビューの実施

部下へのインタビューを実施し、迷いのない評価が実施できれば問題ありませんが、やはり自己
評価と一次評価の差異で迷うことは往々にしてあります。その際のTIPSが他者インタビューです。つまり被評価者の部下や同僚や、一緒に業務をした他部署社員、もしくは顧客に当人の行動について確認するのです。

 自分や部下ではない第三者の意見を聴くことで根拠が増え、一次評価のレベルが上がります。もちろん、フィードバック面談における評価根拠を強化するためにも有効な手段になります。

 ただし、他者インタビューの際は次の 2 点に注意します。これらを押さえておけば、偏りの少ない評価が実現しやすくなります。

  1. 評価のための質問だとは言わない
  2. 可能な限り複数人に聴く

 部下が離れた場所で担当している業務や、上司からは業務の把握がしづらい部下の評価には特に効果的です。手間ですがぜひお試しください。

【TIPS⑮】上司へのインタビューの実施

 部下へのインタビューや他者へのインタビューは評価者として経験を積んでも継続実施いただきたいのですが、上司へのインタビューはまさに評価者 1 年目で取り組んでいただきたい内容です。

上司に対してインタビューし、確認する項目は 3 つあります。

まず 1 つ目は、「一次評価者のクセ」です。初めて一次評価を実施した際には評価者傾向として「ハロー効果」「寛大化傾向」「対比誤差」などが発生しがちです。しかし、評価者本人は気づくことが難しいのです。そこで上司に自分のクセを指摘してもらい、二次評価者に提出する前に、事前にチェックするのです。ぜひクセの確認をしていただきましょう。

2 つ目は「大切にしている評価者の視点」です。評価者として経験の浅さを埋めるために、上司の
評価の取り組みを参考にすることをお勧めします。これを実施することで評価者としてのレベルアップはもちろん、評価に対する意欲が高いということで上司からの評価が上がる可能性もあります。

3 つ目は「印象的な部下を聴く」です。先ほどの他者インタビューに近い内容ですが、個別の部下の名前を挙げると一次評価に対する影響が大きいため、「評価期間中に目立った社員はいましたでしょうか」程度の抽象的な表現で上司に尋ねてみましょう。自分の評価と合っていれば自信になり、自分の評価にない視点であれば参考になります。

以上の上司へのインタビューも参考に評価の内容および評価者としてのレベルアップに努めていただければと思います。

以上が「期末」の評価実施の際の 3 つのTIPSになります。

360度評価の機能を持つ他者への評価インタビュー
図表 360度評価の機能を持つ他者への評価インタビュー

最近、360度評価制度を導入、あるいは、興味を持っていただく企業が多く見受けられますが、制
度が複雑になり、運用が煩雑になるため、うまくいかない事例も散見されます。今回ご紹介したインタビューは図表に示した通り、機能としては360度評価制度に近い取り組みとなりますので、人事の皆さまには、まず他者インタビューを取り入れていただくことも一案です。

いずれにしても、評価のレベルアップは評価者だけに任せるのではなく、組織一体となり、取り組んでいただければと思います。

この記事を書いた人

野嵜 晃弘

大学卒業後、入社した小売業で店長など現場の経験を積み、総務部へ異動後は、評価制度のみならず労務制度、育成制度、福利厚生など人事制度全般を大幅に見直し、社員の定着率向上を実現した。独立後は人事制度コンサルタントとして、制度構築から評価者研修、運用定着まで一気通貫をモットーに4年間で30社以上の評価制度に携わる。運用まで辿り着かず途中で頓挫することがある評価制度において、制度構築および運用100%を実現。またキャリアコンサルタント資格を活かしたフィードバック面談支援や制度運用を通じて人事社員の育成を得意領域としている。

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