フィードバック面談で必要な3つのTIPS

フィードバック

この記事は、月間人事マネジメントで掲載された連載「評価者1年目のTIPS」を再掲載した記事です。

出典:月間人事マネジメント

今回は連載の最後にふさわしくフィードバック面談についてお伝えいたします。

フィードバック面談はご存じの通り、「前期の振り返りにより部下の成長を促し支援内容を確認する場」であります。ただ、「最終評価を伝える場」と認識する評価者が多いと、部下の納得度や今後の成長につながりづらいため、ぜひフィードバック面談の目的を理解し、丁寧に取り組んでいただきたいと思います。

「営業はクロージングが重要」といわれます。実は評価も同じなのです。期初から取り組んできた評価者としての取り組みが、最後のフィードバック面談で部下に対してマズい対応をしてしまうとこれまでの努力が水の泡になってしまいます。もちろん反対にこれまで評価者としての取り組みが弱くても、しっかりフィードバック面談の事前準備をして取り組めば、部下も人事評価に対して納得する可能性が高まります。

それでは最後の3つのTIPSとして⑯、⑰、⑱番目をご紹介していきます(①~③は第1回、④~⑥は第2回、⑦~⑨は第3回、⑩~⑫は第4回、⑬~⑮は第5回にて紹介済)。

【TIPS⑯】事前準備は上司8割、部下2割

事前準備もせずに、最終評価だけを伝えようとしてフィードバック面談に臨んでも良い結果にはならず、反対に部下の信頼を損ねてしまいます。それでは何を事前準備として実施するべきでしょうか。まず重要なのは、これまでのTIPSでもお伝えしてきた通り、評価の根拠となる材料の整理です。期中でメモした内容や一次評価時に部下インタビューした情報を、最終評価と結びつけ評価の背景や理由を説明できるようにしておくことが重要です。

次に必要なのは、今後の成長に向けて前期の部下の成果や課題を「上司として」準備することです。「上司として」とは評価項目の良い・悪いをピックアップするだけではなく、日々の業務行動を踏まえ、上司として気づいた業務内容をプラスして伝えると部下の納得度や意欲も高まります。

また、事前準備としては些細なことですが、フィードバック面談のスケジュールや場所のセッティングは、部下に任せるのではなく、評価者である上司が実施するべきです。面談の場では、部下が顧客という認識で応対すると良い面談になります。

さらに、被評価者である部下にも事前準備を依頼する必要があります。内容は前期の自分自身の成果と課題および来期の取り組みなど過去と未来を整理して面談に臨んでもらいましょう。そうすると、評価面談は人材育成の機能・価値が高まります。

これらの準備では、上司・部下ともに頭の中だけではなく、紙面に整理することでさらに理解が深まりますので、人事の評価担当者としては、記入用のフォーマットを評価者・被評価者に用意しておくとよいでしょう。

【TIPS⑰】非言語コミュニケーションを

フィードバック面談では部下を顧客として応対するという内容をお伝えしました。その場合、「非言語コミュニケーション」といわれる、表情や仕草、姿勢、身振り手振りが大切なポイントになります。

まず面談の冒頭では堅い表情で上司感を演出するのではなく、いかに部下の緊張を笑顔でほぐすかが最初のポイントです。私が上司時代にやっていたことは、打ち合わせ室の上座を部下に勧め、「今日は○○さんが主役だから」と笑顔で伝えました。

次に面談中はいかに部下の話に興味を持ってうなずき、前のめりの姿勢になれるかが大切です。その際には目線を上げ、部下の表情をうかがうことも重要です。以前、フィードバック面談の立ち会いをさせていただいた際に、メモやパソコンの画面ばかり見て、部下に目線を配らない評価者がいらっしゃいました。そのときの部下の方は話しづらそうにしていました。面談では目線も重要な要素になるとご理解ください。

さらに部下の意見を引き出すコツとして「メモを取る」ことが挙げられます。面談というと話をするだけのイメージがありますが、人材育成の場として面談内容を今後に残す必要があります。その際には上司がメモを取ると、部下に対して、面談の重要性を伝えやすくなります。

面談時にポイントとなる非言語コミュニケーションを図表に整理しましたので、人事の評価担当者の方は評価者への注意点としてご利用いただければと思います。

フィードバック面談の非言語コミュニケーションポイント

表:フィードバック面談の非言語コミュニケーションポイント

  1. 面談の最初は部下の緊張をほぐすために笑顔で始める
  2. 目線はパソコンや書面ではなく,部下の様子をうかがう
  3. 姿勢はイスにもたれずに,前のめりになって聴く
  4. 部下の話は無表情ではなく,うなずきながら聴く
  5. 部下の表情に気を使い,声のトーンや大きさを合わせる
  6. 部下の意見はメモに取り,共感と興味があることを示す

【TIPS⑱】質問は2種類を使い分ける

フィードバック面談では部下がいかに話すかが納得度の重要な要素になります。その際、部下にたくさん話してもらうために必要な上司のスキルが「質問力」であり、理解すべきはオープンクエスチョンとクローズドクエスチョンです。

オープンクエスチョンは、幅広い回答を求める際に利用します。例えば「今後はどんなキャリアを考えていますか」「前期で一番苦労した業務は何ですか」などがイメージとして挙げられます。活発に発言する部下に対しては、オープンクエスチョンを多用していただいてもよいでしょう。

クローズドクエスチョンは、限定的な回答を待つ質問になります。例えば、「今後のキャリアは技術者か営業職かどちらを目指しますか」「前期で苦労した業務は、顧客開拓かマニュアル作成かどちらだったですか」など答えやすい質問になります。オープンクエスチョンでは回答が止まってしまう部下に対しては、クローズドクエスチョンは答えやすいため有効な質問になります。ただ、クローズドクエスチョンだけでは部下の思いを引き出すことはできないため、オープンクエスチョンも交えて質問するとよいでしょう。

また「なぜか?」という問いかけは本質を突く質問です。事柄に対してなぜを問いかけることは問題ありませんが、「なぜあなたは」と問いかけると詰問になり、部下が答えづらい環境になりますので、ご注意ください。

以上がフィードバック面談における3つのTIPSです。ちょっとした工夫で面談は充実しますので、ぜひ取り組んでいただければと思います。

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6回にわたってご紹介しました「評価者1年目のTIPS」も今回が最終回となりました。評価を初めて行う立場の方は、その他の業務でも初めての内容が多く、ついつい評価業務は後回しになってしまいます。その場合には人事の評価担当者が今回のTIPSを提示しながら評価者1年目の管理者をご支援いただければと思います。このTIPSが皆さまの人材育成の一助になればうれしい限りです。

この記事を書いた人

野嵜 晃弘

大学卒業後、入社した小売業で店長など現場の経験を積み、総務部へ異動後は、評価制度のみならず労務制度、育成制度、福利厚生など人事制度全般を大幅に見直し、社員の定着率向上を実現した。独立後は人事制度コンサルタントとして、制度構築から評価者研修、運用定着まで一気通貫をモットーに4年間で30社以上の評価制度に携わる。運用まで辿り着かず途中で頓挫することがある評価制度において、制度構築および運用100%を実現。またキャリアコンサルタント資格を活かしたフィードバック面談支援や制度運用を通じて人事社員の育成を得意領域としている。

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