人事制度の役割
会社にとって重要な資源として「人」「モノ」「カネ」という3つの要素があります。もちろんどれも重要ですが、「人」は「モノ」や「カネ」と大きな違いがあります。それは「成果が形として見えにくい」という特徴があります。
「モノ」であれば製品の品質そのものやサービスにしても顧客の利用状況で成果は見えやすいですし、「カネ」は数字として一目瞭然に成果はわかります。ただし、「人」については成長が形や数字として見えにくいのが現状です。
そこで人事制度は、人の成長を形として、みんなで見えるようにする。という役割を果たすことができます。つまり人事制度の役割は「社員の成長を見える化する」ことになります。
ちなみに社員の成長を見える化すると良いことがいくつかあります。
- 社員が自分の成長を実感し次への意欲が高まる
- 上司として部下の成長が見えると褒めやすくなる
- 成長が見えると社員に対して目標設定や権限の委譲がしやすくなる
いわゆる「ハーズバーグの二要因理論」の動機付け要因として社員が会社に定着するポイントが押さえられています。
もちろん人事制度の役割は「社員の成長を見える化する」ばかりではありませんが、一番大事な役割として最初にお伝えしておきます。
人事制度の定義
人事制度は「広義の人事制度」と「狭義の人事制度」があると言われています。
広義の人事制度は人事関連全般の制度であり、具体的には「人材育成」「労務管理」「職場環境向上」などがあります。
また狭義の人事制度は「等級制度⇒評価制度⇒報酬制度⇒昇格制度」などの広義の人事制度の中核を担うものになります。
図にすると以下の通りになります。
そして、この図が全て、もしくは狭義の人事制度が経営者の頭の中だけにある場合が小規模事業者には見受けられます。
頭の中だけにあるのは社員の不安だけではなく、経営者としての悩みも解消しません。それぞれの人事制度を見える化して、仕組みとして社員の成長を目指す必要があります。
人事制度がない組織は・・・
・年に1回は方針を伝えているから部下も理解できているはず
・社員が何をするかは自分で考え、頑張った分だけ報酬で反映する
・上司と部下はあうんのコミュニケーションしているから大丈夫でしょ
・方針は朝礼で聞いたけど自分の目標は何かよくわからない
・業務評価は上司の気分次第なので、頑張っても意味がないですよ
・評価制度や賃金テーブルもないから将来が見えないですよね
このような、社員の成長、会社の成長につながらない職場環境を変えるツールが「人事制度」になります。
人事制度のメリット・デメリット
企業におけるメリット
- 自分の頭の中ではなく、基準に基づいた評価・報酬反映ができるため、不公平感がなくなる
- 管理職が人事評価を実施することで、部下に対する評価および人材育成のレベルアップを図ることができる
- 社内外に対するアピール材料として人事制度を打ち出し、採用および社員の定着につなげることができる
従業員におけるメリット
- 自分に対して何が求められているかが明確になり、目標に向かって業務を進めることができる
- 人事制度という公平感のある仕組みの中で評価・報酬反映がされるためモチベーションが下がらずに業務に取り組むことができる
- キャリアマップや賃金テーブルにより将来がイメージしやすくなり、安心感につながり働き甲斐が出てくる
企業・従業員双方におけるメリット
- 人事制度という仕組みの中で、上司、部下の間でコミュニケーションを取ることが出てくるため、相互理解や職場環境向上につながる
デメリット
1.仕組みとして決まった賃金を払わなければならない
【ただし・・】 従業員としては仕組みとして支払われるため安心して働ける。
2.社員間で賃金の格差が出てしまう
【ただし・・】 格差の無い状況は不公平であり、仕事ができる人は不満になる。
3.評価のための時間や手間がもったいない
【ただし・・】短期的には売上等にはつながりませんが、長期的には社員や会社の成長につながる。